弁護士・福田隆行

お問合わせ・アクセス

トップ  >  法律解説  >  後見制度支援預金について

終活に関する問題

後見制度支援預金について

法律解説一覧

平成30年9月5日

1 後見制度支援預金とは

平成30年6月1日より,東京家庭裁判所本庁で,後見制度支援預金の運用が開始されました。
後見制度支援預金とは,本人の財産を,日常的な支払いをするための金銭と日常的に使用しない金銭とに分け,後者を後見制度支援預金口座に預ける仕組みです(前者は後見人が管理することになります。)。
後見制度支援預金は,通常の預金とは異なって,口座の開設や解約,出入金をするには,予め裁判所が発行する指示書が必要となります。
裁判所が関与することで,本人の財産が適切に管理されるようになります。
後見制度支援預金は,成年後見と未成年後見の場合に利用することができ,保佐,補助,任意後見で利用することはできません。

2 後見制度支援信託との違い

後見制度支援預金と似た制度に,後見制度支援信託があります。
後見制度支援信託は,本人の財産を,日常的な支払いをするための金銭と日常的に使用しない金銭とに分け,後者を信託銀行などに信託する制度です。
後見制度支援信託を利用すると,信託財産を払い戻したり,信託契約を解約したりするためには,予め裁判所が発行する指示書が必要となります。
後見制度支援預金と同様,成年後見と未成年後見の場合に利用することができ,保佐,補助,任意後見で利用することはできません。
後見制度支援預金と後見制度支援信託の違いは,主に以下の点ですが,後見支援預金の方がより利用がしやすい制度であるといえます。
なお,後見制度支援預金と後見制度支援信託は,併用することが可能です。

⑴ 専門職後見人の選任が必要かどうか

後見制度支援信託では,最初に専門職後見人(弁護士や司法書士など)が後見制度支援信託の利用の適否の判断し,裁判所の指示を受けて,信託契約を締結します。
これに対して,後見制度支援預金の場合,専門職後見人を選任するかどうかは裁判所が判断します。そのため,当初から親族後見人のみで手続が開始されることがあります。

⑵ 利用対象財産について

いずれも金銭に限られますが,後見制度信託の場合,最低受託額が定められている信託銀行があります(最低受託額は信託銀行によって異なります。1円以上のところもあれば,1000万円以上のところもあります。)。これに対して,後見制度支援預金の場合,最低預入の制限がありません。

⑶ 費用について

後見制度支援信託では,信託銀行に対する信託報酬のほか,専門職後見人に対する報酬が発生しますが,後見制度支援預金では,手数料は発生しませんし,専門職後見人が選任されなければその報酬も発生しません。

⑷ 取扱金融機関について

後見制度支援信託は,信託銀行等が取り扱っていますが,後見制度支援預金は信用金庫や信用組合が取り扱っています。

以上

▶法律解説一覧へ戻る